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FcRnとは?その重要性は?
新生児Fc受容体(FcRn)は、新生児ラットで初めて同定され、母乳中の母体IgGを新生児の血流へ移行させる上で重要な役割を果たし、受動免疫の基盤となっています。その後の研究により、ヒト胎盤もFcRnを発現し、出生前に母体IgGを胎児へ輸送できることが明らかになりました。
FcRnの機能はpH依存的な結合によって駆動されます。酸性エンドソーム(pH 6.0~6.5)内でIgGに強く結合し、血液中の中性pH(pH 7.4) でIgGを放出することで、抗体の分解を防ぎ、半減期を大幅に延長します。抗体のリサイクルに加え、FcRnは免疫細胞内でIgG-抗原複合体を輸送し、免疫系への提示を促進し、免疫応答を増幅させます(Roopenian and Shreeram 2007)。
FcRnの阻害で治療効果がもたされます。Rozanolixizumabとefgartigimodは、重症筋無力症に対する FDA 承認の FcRn 阻害剤であり、病原性 IgG を除去できます (Pyzik et al. 2023)。

FcRn-mediated IgG protection and recycling (Roopenian and Shreeram 2007)
FcRnをヒト化する必要性とは?
FcRn-IgG結合における種間の差を理解する
抗体薬物動態(PK)は、投与量、曝露量、半減期の最適化に不可欠であり、これらは治療の安全性と有効性を決定する重要な要素です。PKは、標的結合親和性、pH依存性FcRn結合、標的介在性薬物動態(TMDD)などの特性に影響されます。
しかしながら、IgGのFcRnを介したリサイクリングは種特異的です。ヒトIgGは一般的にヒトFcRnよりもマウスFcRnに強く結合するため、マウスでは抗体の半減期が長くなることが多いです(Ober et al. 2001)。この差で、標準的なマウスモデルにおけるPK予測が不正確になる可能性があります。

Binding Affinity Differences Between Human and Mouse FcRn (Ober et al. 2001)
Biocytogenのソリューション:FcRnヒト化マウスモデル
FcRn-IgG結合における種間の差を克服するため、Biocytogenは、マウスFcRn遺伝子をヒトFcRnに置換し、ネイティブプロモーターによって駆動するFcRnヒト化マウス(B-hFcRn)を開発しました。当社はこれらのモデルで、in vivoでの有効性/ メカニズム/ PK研究をサポートし、FcRn標的治療法およびIgGベースの治療法の研究を加速するために必要なトランスレーショナルな知見を提供します。
FcRnヒト化マウスにおける安定的なヒトFcRn発現

FcRnヒト化マウスでヒト抗体の半減期をより正確に予測
FcRnヒト化マウスはヒト抗体の半減期とより強い相関を示す

Internally validated antibody half-lives (days) across humans, monkeys, B-hFcRn, and wild-type mice. B-hFcRn mice show a stronger correlation with human for antibody half-life than wild-type mice, highlighting their value in translational PK research.
YTE変異はB-hFcRnマウスにおいてのみヒト抗体の半減期を延長する
ヒト化抗体医薬品の開発において、有効性、半減期、安全性を向上させるために、標的工学ストラテジーを適用することが多いです。その中でも、Fc-FcRn相互作用の最適化は、IgG抗体の薬物動態(PK)の調節に有効であることが証明されています。例えば、YTE変異――Fc領域の三重置換(M252Y/S254T/T256E)は、酸性pHにおけるFcRn結合を増強し、IgG血清中半減期を著しく延長するため、治療用抗体の持続期間を延長するためのストラテジーとして広く採用されています(Robbie et al. 2013)。
YTE変異が抗体半減期に及ぼす影響を評価した結果、以下のことが確認されました。
• B-hFcRnマウス:YTE変異は予想通り、ヒト抗体の半減期を延長し、クリアランスを低下させます。
• 野生型C57BL/6マウス:YTE変異はマウスFcRnへの結合にほとんど影響を与えないため、ヒト抗体の半減期には影響を与えません。

統合したTMDD:Biocytogenのマルチターゲットヒト化マウスモデル
標的介在性の薬物消失(TMDD)は、抗体医薬品開発において重要な役割を果たします。これは、薬剤が薬理学的標的に高い親和性で結合し、薬剤-標的複合体の内在化と分解を引き起こすモデルです(Mager and Jusko 2001)。
Biocytogenのマルチターゲットヒト化マウスモデルは、ヒト化FcRnと薬物標的を特徴とし、FcRnの介したリサイクリングと、標的の介したクリアランスの両方をキャプチャーすることで、ヒト抗体の薬物動態をより正確に予測することができます。
Case Study: CD40/FcRn二重ヒト化マウスでTMDDモデリングと薬物動態予測を改善する

B-hCD40/hFcRn mice exhibit TMDD and more accurately reflect in vivo anti-human CD40 antibody concentration changes compared to WT and B-hFcRn mice.
PopPKモデリングで抗体PKをヒト化マウスからヒトへと応用
ヒトにおける抗体薬物複合体(PK)を正確に予測することは、医薬品開発の成功に不可欠です。これを裏付けるため、PD-1チェックポイント阻害剤であるpembrolizumabの「population PK(PopPK)モデル」を開発しました。当社のFcRnヒト化マウスから得られた高品質なin vivo PKデータとBetts et al. (2018) の手法を応用し、PopPKモデルを構築し、相対成長スケーリングを適用してヒトクリアランス(CL)を予測します。
CL_human = CL_mouse × (weight_human / weight_mouse)^0.9
予測されたヒトクリアランス0.121 mL/h/kgは、臨床観察値0.119 mL/h/kg (Ahamadi et al. 2017) とわずか1.68%の誤差で、つまり結果はほぼ一致しました。これは、B hFcRnマウスを用いたモデリングのトランスレーショナル価値を証明しています。
モデルのパフォーマンス:予測能力の信頼性
• 青い円:観測データ
• 赤い線:モデル予測の軌跡

Population PK diagnostics showed strong agreement between observed and predicted values (DV vs. IPRED) and no time-dependent bias (CWRES vs. TIME), confirming model robustness.
Individual-Level Fits: Case Examples

Model predictions for three representative B-hFcRn subjects (IDs: 258690, 258700, 258710) demonstrated excellent agreement with observed plasma concentrations.
抗体治療薬向けのトランスレーショナルPKプラットフォーム
B-hFcRnマウスと相対成長スケーリングを組み合わせることで、pembrolizumabのヒトにおける薬物動態を、わずか1.68%のクリアランス誤差で正確に予測することができました。このプラットフォームは、信頼性の高いヒト初回投与量予測を可能にし、抗体開発における前臨床段階と臨床段階の間のトランスレーショナルリンクを強化できます。
BiocytogenのFcRnヒト化マウスモデル

Reference:
Pyzik, Michal, et al. "The therapeutic age of the neonatal Fc receptor." Nature Reviews Immunology 23.7 (2023): 415-432.
Roopenian, Derry C., and Shreeram Akilesh. "FcRn: the neonatal Fc receptor comes of age." Nature reviews immunology 7.9 (2007): 715-725.
Ober, Raimund J., et al. "Differences in promiscuity for antibody–FcRn interactions across species: implications for therapeutic antibodies." International immunology 13.12 (2001): 1551-1559.
Robbie, Gabriel J., et al. "A novel investigational Fc-modified humanized monoclonal antibody, motavizumab-YTE, has an extended half-life in healthy adults." Antimicrobial agents and chemotherapy 57.12 (2013): 6147-6153.
Mager, Donald E., and William J. Jusko. "General pharmacokinetic model for drugs exhibiting target-mediated drug disposition." Journal of pharmacokinetics and pharmacodynamics 28.6 (2001): 507-532.
Ahamadi, M., et al. "Model‐based characterization of the pharmacokinetics of pembrolizumab: a humanized anti–PD‐1 monoclonal antibody in advanced solid tumors." CPT: pharmacometrics & systems pharmacology 6.1 (2017): 49-57.